橋を渡す

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人として生まれたが、私は今や一つの世界を所有する神である。
生まれ育った故郷の街を新しい世界に移植し、街の周りに掘を作って川の水を引いた。突然現れた堀に人々は驚き、街の外へ狩りにも羊の世話にも行けないと戸惑っていた。どうするだろうかと観察していると家々の扉を外し、それを繋げて堀に橋を渡した。
なかなかやるじゃないか、と感心した。
一度しっかりとした橋が出来てしまえば、人々は落ち着き、堀が出来たおかげで新鮮な水が簡単に手に入るようになったと喜びもした。
中には奇妙なことが起こるのを訝しむ者もいたが。

私は自分の支配者ぶりに満足していた。そろそろ種を明かしてもいいだろう。奴らと同じようにただの人間だった私が今や彼らの神なのだと知らせてやってもいいだろう。
公開:18/11/14 13:46

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