あさにゆめみし～重音（かさね）いろは歌四十八字

よかせすけなく　ちりぬるも
われはたゑんや　うつほふね
とおてえそらの　ゐろきへむ
あさにゆめみし　いまをこひ

（読み）
夜風すげなく　散りぬるも
我は堪ゑんや　空穂船
遠て絵空の　色消へむ
朝に夢見し　今を恋ひ

（訳、一～朝寝）
夜が無情にも明けてしまったけれど
私は床から起き難く、夢うつつ舟をこぐ
君の声も、空返事の間に遠く消え
朝寝に夢を見る、今の時間の幸せな事よ

（訳、二～別離）
君との夜はとうに過去の話なのに
私は思い出と別れ難く、空虚に漂う
仲睦まじかった二人は遠く、幻と消え
なお共寝の朝を夢に見て、今の君が恋しい事よ

（訳、三～辞世）
夜は非情にも私の命を散らしてしまった
私は君と離れ難く、三途の船に抗うが
君に返事も叶わず、やがて意識も遠く消え
旅立つ朝、最期の夢を見ながら、、、
君と過ごした今生の、なんと名残惜しい事よ