知らない、ということ。

3
4

神々の世界に呼ばれた。私は、これから自分の世界を育てる。
絶望してしまう。新しい世界を作れるというのに。私にどんな世界が作れるのか。
昔、私が一人の人間として暮らしてきた世界は、今、破滅に向かっている。そんな壊れた世界しか、私は知らない。幸福がどんなものか知らないし、不幸を定義することも出来ない。
古い世界のことは忘れたいけれど、忘れてしまっては「世界」とは何なのかもわからなくなる。

私は「世界の種」に水を与え、光を与えた。水と光はそっと種のおもてを包み込んだ。慈しむように…。
慈しみとは何か、私は知らなかったけれど、今、目の前にあるこれなのかもしれない。

世界が始まろうとしている。いつかそこに植物や動物、そして人間も生まれるかもしれない。人間は生まれてきたって、世界のことを大して知りもせずに死んでいくだろう。
世界がいつか終わることなど、どうしたって理解することなく。
公開:18/11/13 14:25
更新:18/11/13 17:27

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容