せいしゅん

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勤めていた会社が倒産して、失意のままで師走を迎えた。
未練じゃないが、散歩に出た足が会社へと向かう。
本社ビルはまもなく取り壊しになるらしい。現場の確認だろうか、解体業者のトラックが停車していて、アルバイト募集とある。
無念の倒産。ここは守りきれなかった城だ。自分の手で壊すことができるなら、それも供養かと私はアルバイトに応募した。
解体当日、現場には社長が姿を見せた。専務や常務、部長に課長、先輩の姿もあった。皆が解体のアルバイトだ。
若さの分だけ作業に慣れるのが早かった私は先輩を助けた。先輩は課長を、部長は常務を、専務は社長を助けることでチームは一丸となった。
夕暮れて、更地になった旧城に試合終了のサイレンが鳴る。
泥だらけの私たちは、一列に並んで帽子を取った。
ありがとうございました!
皆が旧城の砂を袋に詰める。
それぞれの家族がスタンディングオベーションで迎える。
監督だけが呆れ顔だ。
公開:18/11/13 12:02

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