水浴び

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創造主になれと言われた。これから私は世界を創造する神になる。
世界を作るために『種』を与えられた。傷ついてその実を強張らせた種を私は一晩抱いて眠った。そして朝になり、種に水浴びをさせ、陽の光を浴びせた。
私は種に語りかける。これからは私たちふたりだ。私は故郷へ帰れない。お前は、きっと、これからはもうお前の主人になった神にいいように使われるのは嫌だろう。
居心地のいい世界を作ろう。私たちのどちらにとっても。そして、私たちの世界で過ごす何者にとっても。
答えることのない種に語り続け、種が温まったところで、私は種を暗室に連れて行った。その部屋に水をはった池を作り、その真ん中に種を置いてやる。水栽培だ。
池のふちに座り、私は種を抱き寄せ、水を掬って種の全体にかけてやる。そして頬を寄せる。
古い世界のことなど、忘れておしまい。
ファンタジー
公開:18/11/12 21:03

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