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自転車で約2駅分、20分の距離にある小学校に向かう。私は給食のおばさんだ。
途中の緩く長い坂をスピードをつけて下るのが好きだ。ちょうど坂の終着点に実家があるマンションが建っている。見上げるといつものように、3階の窓に人影が見えた。私は通りすぎ様に手を振る。
窓の向こう側で父は毎朝私がこの道を通るのを待っていた。

去年の夏、父は白血病になり半年で逝った。スマートで背が高く他所のお父さんとは違ってた。百貨店勤めだったからかお洒落で、休みの日も寝転がることもなく、私が起きるといつもきちんと身なりが整っている不思議な人。痛いとも苦しいとも1度も言わず、まるでフッと散歩にでも行くようにいなくなってしまった。

給食の仕事をやめ、毎朝実家の前を通ることはもうない。ただ、週末に母を訪ねることが多くなった。
坂の途中で上を見上げると3階の窓のレースのカーテンが揺れる。
窓の向こう側に、私を待つ父がいた。
その他
公開:18/11/14 10:54
家族

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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