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私は生まれた時はただの人間だった。だが、今は一つの世界を所有する神である。
人間だった頃に住んでいた街を譲り受けて、丸ごと私の新しい世界においてやることにした。雪を頂く山脈を望むこの世界で一番景色の美しい丘にその街を置いた。みんなその眺めにどれだけ驚くだろう。
だが、待っていても誰も家から出てこない。様子を見ようと屋根を外すと、家々の中で人々が身を寄せ合って怯えていた。
私は腹が立ってあらゆる家の窓と扉を開いた。これで外の景色が見えるだろう。
やがて、ある家からふたり、屋外に出る者があり、彼らは狩りを始めた。その家から食事を用意する煙があがると、ほかの家の者たちも外へ出るようになった。
私の世界に街があり、人が動いている。好奇心がそそられて、彼らには見えない指先で道の真ん中に岩を置いたり、街の側に果物のなる木を植えたりした。
人々がいちいち驚く姿が面白くて、そうした実験に私は夢中になった。
公開:18/11/14 10:05

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