毛皮を着替えて
12
13
死んだ猫は毛皮を着替えて帰ってくるものなのだが、僕は今その着替えに失敗してしまった。
つい先程まで光を放っていた子猫はもう動かない。
器を失った僕は、最後にひと目ユキちゃんに会いたいと思った。
職場でスーツ姿のユキちゃんを見つけた。その時、ユキちゃんの手元で何かが輝いた。箱から出されたばかりのボールペンだ。
えっ、これに着替えるの?
疑問に思いながらも僕はボールペンになった。
ユキちゃんはスーツの胸のポケットに僕を入れた。ユキちゃんの体温が懐かしかった。
でも、そこにいたのは僕が知らないユキちゃんだった。資料を睨む目つきも、人と話す時の作り笑いも、トイレでの涙も、僕は知らなかった。
ボールペンの僕は、半年であっさりと捨てられてしまった。
ただ、その半年のお陰で、僕はまたユキちゃんの元に毛皮を着て戻って来ることができた。
僕は前よりもずっとユキちゃんのことが大好きになっていた。
つい先程まで光を放っていた子猫はもう動かない。
器を失った僕は、最後にひと目ユキちゃんに会いたいと思った。
職場でスーツ姿のユキちゃんを見つけた。その時、ユキちゃんの手元で何かが輝いた。箱から出されたばかりのボールペンだ。
えっ、これに着替えるの?
疑問に思いながらも僕はボールペンになった。
ユキちゃんはスーツの胸のポケットに僕を入れた。ユキちゃんの体温が懐かしかった。
でも、そこにいたのは僕が知らないユキちゃんだった。資料を睨む目つきも、人と話す時の作り笑いも、トイレでの涙も、僕は知らなかった。
ボールペンの僕は、半年であっさりと捨てられてしまった。
ただ、その半年のお陰で、僕はまたユキちゃんの元に毛皮を着て戻って来ることができた。
僕は前よりもずっとユキちゃんのことが大好きになっていた。
その他
公開:18/11/13 21:49
北海道出身です。
ログインするとコメントを投稿できます