必ず

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神々の一員となり、私は一つの世界の創造主となった。
いつも光が照らす、夜のない世界を作った。光の中で生きて欲しい。暗闇に怯えることなどなく。
けれども、闇はあった。絶え間なく光を浴びて勢いよく育った森の奥に、木々の枝と葉が創り出す暗闇があった。
そこに青白い小さな人型の生き物がいた。そいつは「カナラズ、カナラズ」と呟きながら一心に穴を掘っている。

「必ずひとかどの人物になる」
「必ず金持ちになる」
「必ず優秀な子どもと認めさせる」
「必ず人気者になる」
普通の人間だった頃に叶えられなかった「必ず」が耳元に聞こえた。
醜い。
私は空から森の中へ手を伸ばし、青白い生き物を掴んで潰した。子どもの頃にイナゴを潰した時のような感覚だった。
今や、私は神だ。誰にも脅かされない。
けれど、心が折れ乱れるのは話す相手がいないせいだ。
私は部屋を出て、神々の街へ出かけた。
ファンタジー
公開:18/11/13 19:24
更新:18/11/13 20:37

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