カナラズ。

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神々の一員となり、私は一つの世界の創造主となった。
世界は順調に育っている。いつも豊かな光と水に包まれた夜のない世界だ。絶え間なく光を浴びて、緑はいつも若く育つ。
この天界に住む神々にとっては、それぞれの世界は見栄や己の力を誇示するための所持品でしかない。その世界に生きる生命のことなど、考えたこともない。だから神々は、世界を千切って切り売りし、競って見せびらかす。
私は違う。そんなことをするのは、神ではない。魔物だ。私は世界を愛おしみ、生命を慈しむ。
必ず、必ず。

「カナラズ、カナラズ…。」
森の奥から声がした。空から手を伸ばし、木々を掻き分け声の元を探すとそこには小さな子どものような青白い生き物がいた。陽の当たらない森の中で、ぶつぶつ呟きながら一心に穴を掘っている。
「カナラズ、カナラズ…。」
初めて言葉を話す者が生まれた。そいつは空を見上げ、木の葉の向こうからニヤリと微笑んだ。
ファンタジー
公開:18/11/13 17:42

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