冷たいキャンドル

目の前にいるあなたはいつにも増して他人に見える。
カフェで始まったこの儀式。
恋人という関係を解散させる儀式だ。

テーブルにインテリアとして置かれているキャンドルがまるで私たちの関係のようにほろほろと光を灯している。

とりあえず注文したコーヒーもすっかり冷めてしまった。

「もう、別れよ...やっぱり」
関係にふぅっと息を吹きかける。

「わかった...」

ため息をついてようやく冷めたコーヒーに口をつける。こんな時のコーヒーはすごく苦い。

「明日も早いんでしょ、もういいよ」

空気が重すぎて早く一人になりたかった。

「あんま無理すんな。仕事ばっかりして...」
そう言って彼は席を立った。

同時に震えるスマホ。

LINEの通知には今日も仕事の用事ばかり。
随分下にいかないと彼が出てこない。

彼のアイコンに映る海にぽつっと呟いて孤独に陥ったのは自分のせいだって気づいた。