逆歌(さかうた)のさっちゃん~A面

4
4

『恨んでる』
彼女の前で背中が蹲る。ホームに片脚をぶら下げて。
「恨んでない」
『嘘だ』
腕の輪に埋もれた頭が振る。
『あんな事して、のうのうと生き延びた僕を恨んでる』
高い声に反し、皮肉に折れた物言い。
彼女がここで会う彼は、いつもそう。
『あの歌は全部、君が作った呪いだ』
「真実を教えて」
指が、透き通る背中をすり抜けた。
「……貴方は、私を恨んでた?」

沈黙が降る。
進まない時の隙間に、亀裂が走る。

『恨んでない。でも、行かせたら、君は僕を忘れる』
療養の為、遠方へ引っ越しが決まった。
散々泣き喚いた翌朝、忘れ物のコートを持って見送りに来た。
遮断機の音がカンカンと、被さって警笛が尾を引く。
皆の目が列車に向いた一瞬。
どん、と。押された。
齣落としの視界。凩の巻き上げた枯葉が螺旋を踊る。
繋いだ指が引き裂かれ、涙を溜めた笑顔が遠ざかる。
車輪とブレーキの奏でる狂った旋律――――
恋愛
公開:18/11/10 13:02
童謡「さっちゃん」を 都市伝説込みで逆方向から考察 実はラブストーリーだった説

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容