影画館

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ふらり、深夜。
頑張っても報われない日々に、嫌気がさした僕。そんな僕が立ち寄ったのは…古びた“影画館”だった。

もうすでに、ある映画が上映されていて、老人がひとり、スクリーンを見つめていた。僕はなぜだか、彼の隣に座った。
スクリーンに映し出されていたのは、“影”。日常を生きる人々の影…。

首をかしげる僕に、老人が言った。
「ここは、映画館ではなく、“影画館”といって…影だけを撮影した映画を上映するんだ」
「…どうして、そんなことを?」
「世の中は、キラキラした世界だけじゃないんだ。見えないところで、頑張る人たちがいる。それを伝えるために、ここはあるんだ」



もう少しで映画が終わろうとしていたその時…老人が、ある影を指差して言った。
「あれは、お前さんの影だ。毎日、頑張って生きているんだな…」

僕は、泣いていた。
なぜなら、僕の頑張りは認められたのだ…。
その他
公開:18/11/09 23:39
更新:18/11/09 23:40
日々を生きる人へ

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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