甘すぎる酒

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 駐車場のカートを回収して店内に戻る時、カートを押して出ていく奴とすれ違った。半額の弁当と発泡酒。それと柴漬けしか買っていない客。俺は「ありがとうございました」と頭を下げて、その一台のカートを取りに戻った。
 店が閉まる前に晩飯を買う。棚を回ってカートに入れていく。発砲酒を買おうとして、自分のカートの中を見る。半額の弁当と柴漬けが入っている…
「失礼しました」
 品出しをしていた女性が棚から避けた。俺は慌てて、彼女が出していた酒を手に取った。
「あ、それおいしいですよ」と彼女がうれしそうに言った。
 俺は「そ、そう」と言って、棚からもう一本取った。

 その酒は、甘すぎた。一本目は口をつけてすぐに捨てた。
 そして、もう一本を、封を切らずに、机に置いて眺めている。
 「あ、それおいしいですよ」という声を繰り返し思い出しながら、弁当を食べている。
 俺は、明日もこの甘すぎる酒を買うのだろう。
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公開:18/11/09 23:04

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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