「11月11日」

カラオケボックスにカップルがいた。
長身で黒い短髪、筋肉質で野性味溢れる男前な塩見(しおみ)と、小柄で茶髪のショートボブ、童顔でかわいい系な牛島(うしじま)だ。
二人はこれが数回目のデート。お互い数曲歌い終えたところで「食べ物でも注文するか？」と塩見が一息つく。すると牛島が何かを思い出したように顔をあげた。
「今日、11月11日！」
「だから？」
「ポッキー＆プリッツの日！」
「くだらねぇ」
「なんでよー。ここ、ポッキーあるから頼も♪」
「お子さまめ」
塩見は文句を言いかながらもポッキーを注文した。
「ウッシー、まさかアレやるつもりなんじゃ？」
そう言われた牛島がびくりとする。
「えへへ」と照れ笑いを浮かべ、ポツリと言った。
「塩見くんの初キスって、どんな味だった？」
「うーん……チョコ、かな？」
「チョコ？！」
「ほら、これからポッキー食べるからさ」
「ぶはっ！」
「なんだ、その反応！」