黄金の海

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透明な巨人がたどり着いたのは、ちょうど紅葉まっさかりの森。そこではカラマツが、様々な落葉樹が色を変え、陽の光に輝いていた。

なだらかに波打つ丘に一面に生える木々は、まるで黄金の海のようだと思った。初めて見た時、その光景がすぐ消えやしないかと、瞬きを繰り返した。

しばらくして衝動的に、巨人はその海に体を被せた。木々は巨人に突き刺ささり、巨人は大量の血を流した。しかし血の色も透明だったので、誰もそれを知る者はなかった。

不思議と巨人の重みで折れた木もなかった。そもそも巨人に重さがあったのか、それはもう確かめる術はない。巨人の血や肉は地面に溶け、残りは鳥がつつき、獣達が食べた。

次の年、ドローンで撮影した映像が話題となった。上空から見ると山のある部分が、特にヒト形に輝く一端が発見されたのだ。しかし調べても何がある訳でなかった。ただ動物達の、豊かな餌場となっているだけだった。
その他
公開:18/11/11 18:00
更新:18/11/16 20:25

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

104.がおー

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