たまには星空を見上げてみようか

2
5

ある夏の夜のこと。国立天文台の所員達が騒然となった。
「間違いないな?」
「はい、確かに動いてます」
天球に瞬く恒星の一つが動き出したのを観測したのだから。
流星のように一条の微光となって消えたのでもなく、星間の年周視差などでもなく。その星は肉眼では補足出来ない程のゆっくりさで、でも確かに一定の方向へと星間座標を変えていくのだ。
こんな事は天球観測史上一度たりともなかったことで。ニュースは瞬く間に世界中へと伝わった。
地球から16.73光年離れているその恒星アルタイルは、途方も無い14光年という距離をひと月ほどかけて旅進み、そうして恒星ベガに重なるように近付き、やがて静止した。
それから1年後、重なった恒星の傍らに新星の誕生が観測された。その6等の光にも満たない小さな、いかにも零れ落ちそうな星は。
“Tanabata”と名付けられた。

案外、星の家族はこうして生まれているのかもしれない。
ファンタジー
公開:18/11/11 16:39
更新:18/11/11 22:56

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容