引き潮ぬる燗

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おっちゃんに波止釣りに誘われた。

リュックサックから荷物を取り出した。
カセットコンロを上に鍋を置き、水を張る。
ちゃぷんと一升瓶をつけ、火を点けた。
沸騰したら火を止めしばらく待つ。

辛うじて触れるくらいの熱さになったら、時計を見、瓶を海につけた。
鍋を下ろし、代わりに網を置き、スルメを炙り始めた。
最初に炙ったのをポンっと無造作に置いた。

気がつくと、下に置かれたスルメはなくなっていた。
僕もおっちゃんも食べてはいない。
スルメがなくなったのを確認すると、
「そろそろ頃合いだな」おっちゃんは瓶を引き上げた。
ぷんと米や麹の香る、まろやかな味だった。

引き潮時に、熱燗を海につけると、ちょうどいい温度になるという。
温度が下がるとともに、お酒の量も減るらしい。
そのかわり、味が濃くなるのだとか。
満ち潮時は、ぬる燗がなぜか熱燗になるらしい。こちらはお酒の量は増えるが、味が薄くなる。
ファンタジー
公開:18/11/08 23:53
スクー

富田京子

400文字に収めることと、思いついたアイデアを形にするむずかしさに苦戦しております。
くすりと笑って頂けたら、幸いです。
よろしくお願いいたします。

2番目の月がお気に入りです。

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