家族なんだ

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この春、私は結婚した。裕之は次男で実家が田舎にあり、両親との同居はないというのも決め手だった。
初めて裕之のご両親と会った時、気さくな人だなと思った
「家族になるんだから」
お義母さんは言った。
「ねえ、裕之の家族も家族ってことになるの?」
「そうじゃない?広い意味では」
結婚してすぐ、裕之の両親がいきなり、徒歩十数分の場所に越してきた。
「家族になったんだから」
お義母さんは言った。

「こんな側にいきなり越して来るなんて!」
私は憤り、裕之は曖昧に笑う。
それから両親は毎日のように訪ねてくるようになった。
「家族なんだから」
お義母さんは言った。
「裕之、お義母さんに言ってよ!毎日だよ。気が狂いそう」

そんなある日、裕之の両親が、事故であっけなく亡くなった。私は正直ホッとしたのだが。

それから毎晩のように、寝室の壁をすり抜けて義母と義父が現れる。

「だって、家族なんだもの」
その他
公開:18/11/08 19:35
家族

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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