あなたも誰かの英雄(後編)

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胃がむかつき、スーパーの駐車場に車を停める。
条件は同じだった。
両手が荷物と傘でふさがった小さな帽子。
何もしなかった。見ていたのに。
お婆ちゃんはすべき事をして、後ろの迷惑もきちんと考えた。

夕暮れにも鮮やかな笑顔は、はっきり自分に向いていた。
走り去る青い車体とテールランプが、スーパーマンのマントみたいだった。

サイドミラーに、ぐったりしおれた顔。
いたたまれずドアを開ける。
丁度同年代のお婆ちゃんが、カートを押して前を横切った。
――あ。

何年か前。
ホームセンターで、カートの商品をひっくり返した。
崩れた商品を乗せ換え、レジへ運んだ。
善意でも何でもない。単に進行方向だった。
何度も頭を下げられた。車を出すまで、ずっと笑顔で見送って。

きっとそういう事なんだ。
名前もない英雄達の、何でもない当然の積み重ね。
それが誰かから誰かへ、今日もありふれた奇跡のバトンを繋いでいく。
その他
公開:18/11/09 22:16

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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