あなたも誰かの英雄(後編)
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胃がむかつき、スーパーの駐車場に車を停める。
条件は同じだった。
両手が荷物と傘でふさがった小さな帽子。
何もしなかった。見ていたのに。
お婆ちゃんはすべき事をして、後ろの迷惑もきちんと考えた。
夕暮れにも鮮やかな笑顔は、はっきり自分に向いていた。
走り去る青い車体とテールランプが、スーパーマンのマントみたいだった。
サイドミラーに、ぐったりしおれた顔。
いたたまれずドアを開ける。
丁度同年代のお婆ちゃんが、カートを押して前を横切った。
――あ。
何年か前。
ホームセンターで、カートの商品をひっくり返した。
崩れた商品を乗せ換え、レジへ運んだ。
善意でも何でもない。単に進行方向だった。
何度も頭を下げられた。車を出すまで、ずっと笑顔で見送って。
きっとそういう事なんだ。
名前もない英雄達の、何でもない当然の積み重ね。
それが誰かから誰かへ、今日もありふれた奇跡のバトンを繋いでいく。
条件は同じだった。
両手が荷物と傘でふさがった小さな帽子。
何もしなかった。見ていたのに。
お婆ちゃんはすべき事をして、後ろの迷惑もきちんと考えた。
夕暮れにも鮮やかな笑顔は、はっきり自分に向いていた。
走り去る青い車体とテールランプが、スーパーマンのマントみたいだった。
サイドミラーに、ぐったりしおれた顔。
いたたまれずドアを開ける。
丁度同年代のお婆ちゃんが、カートを押して前を横切った。
――あ。
何年か前。
ホームセンターで、カートの商品をひっくり返した。
崩れた商品を乗せ換え、レジへ運んだ。
善意でも何でもない。単に進行方向だった。
何度も頭を下げられた。車を出すまで、ずっと笑顔で見送って。
きっとそういう事なんだ。
名前もない英雄達の、何でもない当然の積み重ね。
それが誰かから誰かへ、今日もありふれた奇跡のバトンを繋いでいく。
その他
公開:18/11/09 22:16
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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