あなたも誰かの英雄(前編)
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仕事が押し、普段より30分遅く会社を出た。
ラッシュに嵌まり、ブレーキとアクセルを交互に踏みつけながらハンドルを切った。
――うわ、危ない。
赤信号に引っ掛かった交差点、じりじり青を待っていると。
こちらも下校中らしき黄色帽子が、荷物と傘を手に進行してきた。
予想通り、奴は風に煽られ、荷物とランドセルを停止線にぶちまけた。開いた傘が電柱脇に着地する。
歩行者信号の点滅に気付かないのか、帽子が逃げた傘を追う。
馬鹿――!!
蒼褪めた視界で、前のドアが開く。
推定70代のお婆ちゃんが、駆け寄って傘をキャッチ。帽子にパスした。
気が抜けた。
お婆ちゃんが後ろを見返る。
目が合った瞬間、にっこり笑って一礼。
何事もなかった顔で走り去った。
ハンドルを握りしめた。
傍観に徹した自分を恥じた。
彼女は子供を助け、後続にも配慮した。
にじんだ目を擦り、重たいブレーキペダルから、のろのろ足を離した。
ラッシュに嵌まり、ブレーキとアクセルを交互に踏みつけながらハンドルを切った。
――うわ、危ない。
赤信号に引っ掛かった交差点、じりじり青を待っていると。
こちらも下校中らしき黄色帽子が、荷物と傘を手に進行してきた。
予想通り、奴は風に煽られ、荷物とランドセルを停止線にぶちまけた。開いた傘が電柱脇に着地する。
歩行者信号の点滅に気付かないのか、帽子が逃げた傘を追う。
馬鹿――!!
蒼褪めた視界で、前のドアが開く。
推定70代のお婆ちゃんが、駆け寄って傘をキャッチ。帽子にパスした。
気が抜けた。
お婆ちゃんが後ろを見返る。
目が合った瞬間、にっこり笑って一礼。
何事もなかった顔で走り去った。
ハンドルを握りしめた。
傍観に徹した自分を恥じた。
彼女は子供を助け、後続にも配慮した。
にじんだ目を擦り、重たいブレーキペダルから、のろのろ足を離した。
その他
公開:18/11/09 22:15
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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