威勢のいい声

「はい、田中さん入りました！！」
「ハイっ！いらっしゃいませ！喜んで！」
「はい、水谷さん入りました！！」
「ハイっ！いらっしゃいませ！喜んで！」
「防腐処理開始しまーす！」
「出発進行ー！」
威勢のいい声がこだまする。
「町田院長、こんな光景初めて見ましたよ」
「ああ、そうだろう、世界中探してもウチの病院ぐらいだ！」
「不謹慎と違いますか？」
「考えてみたまえ。それは死は未知の怖いものだと思っているからじゃないか？君にも渡した私の本、『ズバリ知る死 永遠の通過点』にも詳しく書いてあるのだが、死は新しいパラレルワールドの入口。スタートの場所です。もっと喜びましょう」
「はあ、そうですね。やたら声が大きい霊安室は斬新だと思います」
しかし、田中さんと水谷さんの親族が見たらただじゃ済まないだろうなぁと防音された霊安室でMRの俺は思い、霊安室で満足気な大病院の院長に薄笑いした。