「神のみ詞(ことば)」【離婚届を揃えている出雲大社】

0
4

神在月(かみありづき)には日本中の神々が出雲大社に集われる。
 何十万組も娶せる(めあわせる)作業に神々はかなりお疲れであった。
 昔より我々に対する信仰心は薄れてきているのにこういう時だけ「神頼み」をしおって。神々の不満もまた募っていた。
 今年最後の一組を決めようとした時、一柱(ひとはしら)の神が宣うた。
「この二人は過去世において何度も夫婦(めおと)になっておるが、何度も縁切りを繰り返しておる。今世でも繰り返すのでは?」
 神々はまた縁組のやり直しをせねばならないのかとゲンナリされていたが、ある神が提案した。
 神々は口々にその提案に同意なされ、宮司に託してそれぞれの地へ帰っていった。
「掛まくも畏み畏み大神さまのお告げである」
『機会を何度も与えよう。幾度となく参拝するがよい』
 宮司は恭しく夫婦(めおと)予定者たちに頭(こうべ)をたれて神のみ詞と離婚届用紙を手渡した。
その他
公開:18/11/08 18:46

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容