腐れ縁

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「高校以来の腐れ縁か…」
 私の交友関係は、取り立てて華々しいものでもなかったが、それでも歳月を経れば「縁」というものの存在を感じ取れるようになるものだ。
 一周忌。私はお墓で、私と繋がっていた縁をぼんやりと手繰ってみた。でもその殆どに、あまり手ごたえは感じなかった。

「寂しい自分がいるのなら、世界も少しだけ寂しがっているんだよ」

 寂しさは哀しさではない。私は、美しいもの、価値あるものを、一杯、魂に蓄えている。だから、怨みが忍び入る隙はどこにも無い。いつだって私は、この世と魂で触れ合っていて、希薄な縁をなぞりながら、漂っていられるのだ。
 時々、空の彼方へ飛んでいってしまいそうになる私の足に、ぶら下がって引き留めるのが、達夫や美麻との繋がりで、地の底へ引きずりこまれそうになる私の首に、縄を掛けて引き上げてくれるのが、田上だった。
 この関係はずっと続くと私は思う。それが「腐れ縁」だ。
ホラー
公開:18/11/08 09:50
更新:18/11/08 10:02

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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