「よち」

野外でのBBQパーティー。肉や色とりどりの野菜が網の上で踊る。そろそろ食べ頃だと、皆が声を合わせた。
「いただきまーす！」
と、その声を合図としたかのように突風が吹き荒れた。
舞う土埃。それは肉や野菜に覆い被さる。色とりどりだった食材がカーキ色に染まった。
「うわぁ……どうする？」
「土埃被ってないところはないか？」
「んー。あれ、これ……」
「ん？　誰だ、じゃがいも何個も丸々乗せたの？」
「あ、僕ですねぇ」
呑気な声を上げたのは、丸眼鏡をかけた男。
「先生ぇ、どういうつもりですか！」
先生と呼ばれた丸眼鏡の男はニコニコしている。
「土埃被っちゃいましたけど、それは皮を剥けば大丈夫ですよ」
「こうなるって予知していたんですか？！」
「僕、風の子ですから」そう言った先生の丸眼鏡がキラリと光った。
「疑いの余地もなかったですねぇ」

そんな先生の皿には肉と野菜がちゃっかり取り分けられて、いた。