ゆるみ教授

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ゆるみ教授はいつも頭にオムツをかぶっている。
人を笑わせようとしているのではない。オムツにはたくさんの記憶がしみている。
私はある大学に教授の引き抜きを依頼された。
教授の講義は学生にとても人気だ。専門は文化服装学。ひとりひとりの話をしっかりと聞く対話の時間が好評で、皆が教授と話したくて集まっている感じがある。
教授は一度話したことを忘れない。学生の名前や会話の内容も記憶していて、次に会ったときには名前を呼び、熱心に会話の続きをしてくれる。人を惹きつける達人でもある。
頭のオムツは聞き漏らしを防ぐ。とっておきのダジャレやアイデアも漏れなく記憶できる。
私は教授がオムツを替えるときを待った。新しいオムツはこちらで用意した。替えたときが雇いどきだ。容量は三年分。
甘酢のようなにおいがして、教授の記憶が横漏れしている。
「先生、替えどきです!」
「スマン。講義が長引いて下に履いてしまったよ」
公開:18/11/05 10:47
更新:18/11/05 14:37

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