家族届け ―決断

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 家族になりたいと思える女性と出会い、彼女も同じ気持ちだと言った。話はそこから始まる…

「僕としては、君を妻として迎えて、できれば子供を…」
 そう切り出すと、彼女が困り顔になった。
「私も、あなたと家族になりたいわ。とっても頼りになるし、物知りだし。だから、私としては、兄と妹という関係が理想なんだ」
 僕はずっと、そのことに気づかぬふりをしてきたのだった。

「僕のこと嫌いなの?」
「ううん。ただ私、ずっとお兄ちゃんが欲しかったから…」
 彼女が妹になって、いつか夫を迎える日がきたら、僕はそれを祝福できるだろうか? そんな日が来るなら、始めから家族になんかならないほうがいいのかもしれない。
 しかし…

「わかった。僕の妹になってくれるかい?」
 そう言うと、彼女は大きく頷いた。

 それから、僕たちはお互いの戸籍を広げ、重家族がいないかを検討し、家族届けの証人を誰にするかを相談した。
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公開:18/11/07 10:41

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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