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春、ピンク色に染まった桜のトンネルを木製の船がユラリ、ユラリと揺れながら川の道を行く。
川辺を見ると大勢の老若男女がワイワイ、ガヤガヤと騒いでいた。
ふと、魚が跳ねる音に惹かれ、川面を覗くと、上流に向かい泳ぐ魚と対照的にピンク色の小さな小さな小船が何艘も何艘も下流の方へ旅立っていった。私も一緒に付き合おう。ちょっとそこまで。

夏、空を見上げると大輪の花が漆黒のスクリーンに盛大に咲いていた。
ヒュ~~ドーーン。
ああ、綺麗だ。美しい。私も絶対に夢を花開かせてみせる。君達の様にドーーンと盛大にね。

秋、茜色や黄色に染まった紅葉の絨毯を踏みしめ、道を歩いていると急に胸が苦しくなり、吐血した。

冬、野山は白い雪化粧で覆われた。
私もそれに倣い、白い服を着てこうして安らかに眠っている。

なあ、息子達。私がいなくなった後は、盛大に宴を開いてくれないか。向こうに行ってもしんみりしない様に。
公開:18/11/06 19:05

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