absoluta obeemo

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「人類補完計画っていう冗談を本気でやってる機関だと思っていただければよろしい」
 主任、佃島治夫(54)は、白衣のポケットに両手を突っ込んだまま、度が入っているとは思えない黒縁のロイド眼鏡越しに、笑いを押し殺しながら、記者の相手をしていた。
 今日、私は、観測機器の感度をかなり敏感に設定されていたので、周囲の状況が逐一、音声言語として聴覚に届けられ、そのいわば、断片的な情報を統合して、佃島治夫(54)の立ち居振る舞いを、私自身の口頭で研究員に伝え、システム運用に関する精度を測定している。
『観測者というより、システムの出力装置って感じなんだよね』
「ん? 今のはどこからの出力? え? 君の感想? そういうの、データの精度が落ちるんで、やめてもらえます?」
 今日のオペレーターは容赦ない。
『absoluta obeemo』
 と言ってみる。向こうで主任が爆笑する。オペレーターが舌打ちする。
SF
公開:18/11/04 09:28

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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