ハリネズミの恋(下)

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針を持たないネズミに恋したハリネズミ君。
彼女と同じ普通のネズミになる為、自分の針を自分で引っこ抜いた。
彼がどんな結末を迎えたか、何となく判るかな。

よろよろの体で、愛しいネズミちゃんの元へ走る道中。
血の臭いを嗅ぎつけた狼に、ぱっくり食べられましたとさ。
自分を曲げて別の存在になろうなんて、上手く行きっこないじゃないか。

身の程知らずと呆れるかい?お気の毒と笑うかい?
馬鹿なハリネズミ君は、それでも幸せだったろう。
やっとやっと、あの子を傷付けず抱きしめられる。
血まみれの体で突っ走りながら、嬉しくて頭が一杯で。
この先の自分の末路も。
そんな自分を見て、愛しいあの子がどう思うかも。
手に入れたかった恋が、永遠に手に入らず終わってしまうかも知れない事も。
どれ一つ考えられない程幸せだったんだろう。

恋ってやつは、しばしば恐ろしく滑稽で残酷で、絶望的に悲惨に幸福だったりするからね。
ファンタジー
公開:18/11/04 00:00
ハリネズミのジレンマと イソップ寓話

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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