祖父の夢

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 亡くなった人の夢は、本人からのメッセージだろうか。ただの記憶の整理だろうか。
 聞けば、霊感のある人間以外は、夢に故人が出てきても話すことは出来ないという。
 確かに、祖父が夢に現れた時は、いつも無言だった。

 成人してから一度だけ、どうにも辛くて自分から祖父に願ったことがある。
 声が届いたのか、その晩、祖父が夢に現れた。祖父が変わらず見守ってくれていると思うと嬉しかった。しかし、祖父はふすまの向こうからひょいと顔を出すだけで、一向に動かない。不思議に思い、こちらに来てくれるように呼び掛けても、祖父は微動だにしない。
 そこで私は気づいたのだ。これこそが、祖父からのメッセージなのだと。
 いつでも見守っているが、それはお前が解決すべき問題だよと。
 昔気質の、やさしさよりも厳しさの祖父らしいやり方だ。
 まずは、やれるところまでやろう。そう思えた祖父の教えを、私は今も大切にしている。
その他
公開:18/11/05 01:26
更新:18/11/05 22:47

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