残り夏(のこりが)

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彼とは同い年。毎年、夏の1週間だけ会う友達。3歳の時からずっと。一緒にプールに行ったり、お宝の地図を覗きこんだり。それは当たり前の私たちの距離で、ずっと変わらないものだと思ってた。

だけど思春期になると現実を思い知る。周りを取り巻く環境は確実に変わっていく。共有した時間が確かにあって、同じように時は流れてるのに、異国の彼はもう全く別の世界にいた。彼の方に先に彼女ができて、その年の夏は恋愛相談ばかりされた。隣で花火をしてたのに、彼がとても遠かった。

花火の煙の匂い。彼の睫毛が花火に光り、ふいに私は泣きたくなった。たまらず彼の瞼にキスをした。

次の年から彼は私と会わなくなった。泣き腫らしても遅かった。

そんな私達が大人になって再会し、子どもを持つなんて。

庭で遊んでいる愛しい我が子達を見つめていると、淹れたての珈琲を持ってきた彼が隣に座った。私達はまた、今度は彼から、私にキスをした。
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公開:18/11/04 21:13
夏の下書き消化 苦手な方、ごめんなさい

綿津実

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