『奇妙な仏壇』

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『奇妙な仏壇』
 5年前に父、3年前に母を亡くした一人っ子の僕は、思い切って実家を売り、東京で一人暮らしを始めた。仏壇は実家から運び、1DKの家に収めた。30歳、一人暮らしの僕にとっては、仏壇の存在が言わば家族の象徴のように思えた。だから扉は大体開けて暮らしていた。ところがある日、会社の飲み会の際、部下の女の子を口説いたが断られ悪態をついて帰宅すると、扉が閉じていた。
 その時は特に気に留めなかったがある日、僕は道で財布を拾い、思わずそれをネコババしてしまった。帰宅すると、仏壇の扉が勝手に閉まっていた。気色が悪いので扉を閉めて外出した日、道に迷っているお婆ちゃんを助けて帰宅すると、逆に扉が開いていた。
 その後も、僕が悪い事をすると勝手に扉は閉まり、たまに善い事をすると扉は勝手に開いた。それに気づいて以来、僕のチョイ悪は止まり、仏壇は僕の両親になった。
その他
公開:18/11/02 10:12

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