モフモフ・オフィス

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「おっとあぶない。ゴメンよ、モフン」
 伸びてきた芝生が、今日もモフンのおかげで綺麗にそろえられていく。
 ここは私のみずみずしいオフィス。今ではどの企業もこの『芝生の床』を生やしている。
 そして、モフン。この不思議ないきものは、人が踏んでも潰れない特殊な芝生を好物とする。腹側にある口で余分な草を食べ、整えてくれる。全身がモフモフの毛で覆われ、顔や手足はすでに退化。唯一残ったかわいい尻尾は、草を食むたび左右に揺れる。

 モフンはかわいい。見ているだけで癒される。愛おしくてたまらない。もう大好き!
 ある日。私とAさんのデスクの下、ほぼ同時期に赤い花が咲いた。どこからか種が飛んできたらしい。
 モフンは初めて見る花に戸惑いながら、結局それを食べてしまった。途端にAさんが泣きだした。オフィス中に冷たい空気が流れる。 
 え? ジンクス? なんだいそれは。
その他
公開:18/11/01 17:27
更新:18/12/30 14:30
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二森ちる( 瞑想と妄想の森で )

二森(ふたもり)ちると申します。
人生の節目に、二つ目の名前をつくりました。童話や小説などはこの名で執筆しています。
怪談やホラー系は「鬼頭(きとう)ちる」名義で活動しています。
どうぞよろしく。

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