らほつ

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眠れずに螺髪(らほつ)の数を数えたことがある。
螺髪。それはほとけさまの頭部にあるぶつぶつ。髪を巻いたものだというから、パーマネントの途中なのかもしれないと私は思う。
大仏のそばで生まれ育った者なら誰もが試みる修行のような遊び。住職が寝静まった夜、ほとけさまの背中にハシゴをかけて、肩をつたって前から後ろから。しるしを付けるわけにはいかないから数えることを止められない。集中していないと自分がどこまで数えていたのかがわからなくなる。いったい自分は何をしているのだろうかと指を止めたら最後、数えていた螺髪を見失って、もうすべてを投げ出したくなる。眠れるはずもない。
数えきったとして正解はあるのだろうか。住職に聞けばわかるものなのだろうか。
ある夜、トイレに立った私は、寝間に住職がいないことに気がついた。本堂には蝋燭の火が灯っている。
私は障子戸の隙間から、ほとけさまの御髪をとく住職の背を見た。
公開:18/11/01 13:02
更新:18/11/03 19:50

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