光る海

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体が凍てつきそうな寒さ。陽がまだ昇る前の時刻。僕は光る海を見たことがある。

始めは薄暗い海だった。ほどなくして白い鯨が顔を出した。潮吹く鯨。やがて潮は天まで届き、天使の梯子が降りてきて、白いものがつたってきた。それは胸に光を抱いていた。

光を海に撒くとそこから波紋が広がり、あっという間に行き渡って、海はオレンジ色に染まった。鯨が鳴くと飛び魚が跳ねて伸びをし、魚はきらきら光り海の色に溶けた。海は白波も立てることなく静かに揺れていた。

近くに行って、その温かさに抱かれたいと思った。でも海は遠かった。僕がいるのはてっぺんだから、叶わないほど遠かった。

やがて朝の頭が見えた。あくびをしたような、ほわほわした光が海から顔を出した。

いよいよ朝日が僕に当たると、海は一瞬で白く、そして見慣れた青色に変わった。今までが夢か幻だったかのように、どんなに目を凝らしても、海の青は変わることはなかった。
ファンタジー
公開:18/11/01 22:58
更新:18/11/04 07:11
朝を告げる者たち

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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