付潜

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いつも怒ってばかりの課長が、僕に突き返した書類には、付箋が貼ってあった。そこには、「明日また提出しろ」と容赦ない文字。
なんだかな、やる気が出ないな…と、付箋の文字を見つめていると…。
書かれていた文字が、変わっていくではないか!
そこに現れたのは…「お前、最近よく頑張ってるよな。でも無理するなよ」。
僕は、付箋を手にし、課長の元へ。

「か、課長!!これ、どういうことですか!?」
課長は少し気恥ずかしそうに
「娘にな、怒ってばかりではダメだと言われて、“付潜”とやらを勧められてな…」
課長の話によると、この“付潜”は、付箋に普段言えないことを潜り込ませることができるというのだ。


それからというもの、僕の所属する部署では、“付箋”ではなく、“付潜”が使われている。
皆、普段言えないような相手を褒める文章を、“付潜”に潜り込ませているのだ。
公開:18/11/01 21:43

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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