ネコ課

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「にゃい、足りにゃい!」
肉球をなめなめ、券の枚数を数えては、ブチ課長が怒っている。
「全然足りにゃい。このままじゃボスに叱られる」
「課長、1枚回収してきました」
「でかした!」
褒められたキジトラは、嬉しそうにのどを鳴らした。
「でも、まだ足りにゃい。ノルマ未達成だとおまんまの食い上げだ。みんなで探せ、しぼり取れ」
「アイアイニャー!」
ネクタイ姿の猫たちが、一斉に社内へと散っていく。その中で、なじみの三毛と目が合った。
「鈴木様っ!」
三毛は猫なで声で僕に駆け寄ると、これみよがしに机の上で仰向けになった。
「ほうら、この腹、モフモフしたくなりませんか? モフモフ、お好きでしょう?」
とうとう僕は、残していた猫券をさし出した。社食の食券と同じく、代金は給料天引きなのだが、癒しのためには仕方ない。
あちこちでモフモフを楽しむ僕たち人間を、社長の腕に抱かれたボス猫が、満足げに見つめていた。
ファンタジー
公開:18/11/01 18:59
更新:18/11/01 20:07

滝沢朱音

小説を書いています。SF(すこしふしぎ)系や、生と死を見つめた作品が多いです。
Twitter☞ https://twitter.com/akanesus4

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