何をしててもいいんだから

「何をしててもいいのよ」
入社したその日、仕事中なのに突然編み物をはじめた隣の先輩に私が仰天していると、部長が優しく言ってきた。
聞くところによると以前はほかの会社と同じように、勤務時間の間は仕事以外のことをしてはいけないと決められていたらしい。けれどそれだと仕事ができる人ほど時間が余ってだらけてしまい、かえって能率が悪かったのだとか。
だから今では、仕事の区切りがついていれば暇なときには何をしてもいいと規則を変えたのだという。ただし外出は禁止。隣の先輩は編み物だけど、部長は読書。資格試験の勉強をしている人もいる。
今ではみんな、だらだらすることもなく、次の仕事が入ったときでもさっと頭を切り替えられるようになり、とても能率が上がったのだそうだ。
私も早速、次の日から小説を書きはじめた。なるほど、とっても調子がいい。時間を無駄にしていない感じが最高だ。おかげでこの会社には長く勤められそうだ。