生まれ変わり

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スーツ姿の天使に生まれ変わりの希望を訊かれ、「イケメン」と即答した。
32歳の誕生日前日に歩道橋の階段を踏み外して呆気なく死ぬまで、俺は恰好いいという評価とは対極にいた。大切なのは顔じゃないなんて嘘だ。中身が良ければと言う人間も、中身を知りたい相手を見かけでふるいにかけている。
「運動神経も抜群で」
学生の頃にモテる奴は大抵運動ができる。
「ちやほやされたいし誰かの特別にもなりたいです」
恋人がいたことは一度もなかった。俺の死を嘆いたのは両親だけだろう。
次はそんなのまっぴらご免だ。

そうして俺は今、女とともに暮らしている。
「昨日あげた動画もこんなにリツイートされて、」俊敏に動く俺の端正な顔がアップで映る。「すっかり人気者ね」
だが俺は大いに不満だ。こんなはずじゃなかった。彼女に優しく撫でられていると、まあいいかという気分にもなるけれど。
心地良さにうっとりし、にゃーと鳴き声が漏れた。
その他
公開:18/10/31 18:28

みなみ

はじめました。はじめまして。

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