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「ああ、」
頭を片向けるとほろほろと文字がしたたり落ちてきたので、私はようやく安心して息をついた。ここのところずっと大地が鳴動してばかりでどうにも落ち着かなくて、ひりひりとして干からびかけていたところだったのだ。やはり私は満ちてあふれてひたひたになる位でないと、どうにも気が狂ってしまって大変に良くない。
私がしみじみとしている間にも、文字はたふたふと波打ちながらこぼれ続けていて、私の足元にゆらゆらと打ち寄せている。気づけば私はいつの間にか、足首のあたりまでさざめく文字に浸かっているのだった。さわさわと肌に触れて漂う文字たちはとても心地がよい。
ああ天変地異だって、ただそれだけであったら泣きそうなほどに好きなのに!私も生き物である以上、命の灯火を消してはいけないのが全くの手間であることだ。もしそうでなかったら、大地が咆哮する中で、地底に幾億の時間が重なっているか、じっくり観察できるのに。
ファンタジー
公開:18/10/30 23:16
更新:18/10/31 01:05

cross_winter

こちらとあちらをふらふらする辺境歩き、感受性お化けです。SAN値は直葬されています。
雪が好きです。夏は夜ではないと生きられません。にゃあ。

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