売り飛ばされる月

ごめんよ、月美。おとっつぁんもおっかさんも、好きでこんなことをするんじゃないんだよ。でもね、もう限界なんだ。
ここひと月の夕飯を思い出しておくれ。ウサギが落としていった栗のかけらだけだろ。
ウサギが餅つきをするための米も用意できないんだよ。

こうなったら、もう、おまえをドン・キホーテに売るしかないんだよ。

わかっておくれとは言わない。ほんの少しの間だけ、辛抱しておくれ。おまえのことだ。きっと、その美しさに惹かれて、月の好きな優しい人が買ってくれるよ。
そうすれば、ウサギにたくさんのもち米をやることができるし、街の明かりでいつも明るく輝いていられる。お前だけでも幸せになってもらいたいんだ。

図々しいことを言うようだけど、もし、お前が幸せになったら、私たちのところにもち米を届けてはくれないかい。そうしたらウサギたちも栗拾いをしなくてすむからね。

体に気を付けてね、月美。
幸せにおなり。