空から降るヨーヨー

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「今日は午後からヨーヨーが降ります」
いつも通り堅物そうな天気予報士が言う。
私は首を傾げながらも会社へ向かい仕事をする。昼食後、近くの公園へ向かった。
「あっ、降ってきた」
シャボン玉を追いかけていた子供が立ち止まり空を見上げている。
確かに色とりどりのヨーヨーが降ってくる。
次から次へと拾い上げる子供たち。
「はい、どうぞ」
一人の子供が私に緑色のヨーヨーを差し出した。私は小さく礼を言うと受け取った。若い母親は頭を下げると二人で走り去っていった。
その二人の背中に、妻が幼い息子の手を引いて家を出て行った日を思い出した。それから一度も会っていない。

人付き合いが苦手だった。それは家族であっても同じことだった。会社も近所も付き合いはなく、学生時代の友達もいない。
もうすぐ私は六十五歳になる。四十年ほど働いてきた会社を去らなければならない。
ヨーヨーは私の手から転がり芝生の上に落ちた。
その他
公開:18/10/31 11:51

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