ボトルの鼻水

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風呂場の空気を入れ替えようと、鼻水をすすりながら換気をしていた。と、シャンプーボトルのノズルの先からポタポタと液体が垂れていることに気がついた。変だなぁ、壊れたのかなぁと思っていると、不意にノズルが「くしゅん」と大きなくしゃみをした。そして長く垂れた液体をズズッとすすって素早く引っこめたのだった。

ははあ、このボトルも鼻風邪なのか。

鼻風邪のつらさなら、自分もよく分かっている。何かやってあげられないか――。
そうだ、と閃き、おれはある物を持ってきた。それは自分も使っている点鼻薬だ。ノズルの先にシュシュッと何度かかけてやる。
「よくなるといいな」
おれはボトルに言って風呂場を出た。

薬の効果はてきめんで、ボトルの症状はずいぶん和らいだようだった。
その証拠に、あとで風呂場を覗いてみると、ボトルは安らかに眠っていた。
ノズルの先に、鼻提灯をぶらさげながら。
ファンタジー
公開:18/10/31 10:50

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。15年からは自らが発起人となり立ちあがった「ショートショート大賞」において審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、新世代ショートショートの旗手として幅広く活動している。著書に代表作『海色の壜』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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