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寒い時期だけオフィス業務をする会社『煮込堂』に中途入社した。
業務初日。デスクの引き出しに水が入っていた。先輩にきくと、引き出しを見せてくれて、モツが煮込まれていた。
「うちの会社は仕事の成果や人柄がこの引き出しに出るんだ。具材が増えたり、出汁がよくでて、煮込むほどに美味しさも増す。煮詰め過ぎには注意な」
先輩は、みんな違う引き出しを持っていた。
会社の支柱でもある部長はシチュー。パリパリ仕事をこなす双生児の課長はポトフ。恐ロシアだけど情に厚い係長はボルシチ。
僕も仕事に励み、牛すじを煮込んだ。下処理が丁寧で筋がいいと褒められた。
業務最終日。社長のデスクで呑むことになった。
社長の引き出し……見たい。
赤提灯の下、これでもかとおでんの具が詰まっていた。
大根は芯がありながらも、心にも染みて泣けた。
『カラシが効いたか?来週から大忙しだぞ。冬場に仕込んだネタで、世界中をハシゴするんだから』
その他
公開:18/10/31 10:43

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

★第19回坊っちゃん文学賞大賞『ジャイアントキリン群』

★2025年12月、2冊同時刊行の電子書籍
『3分間のまどろみ カプセルストーリー』(Gakken)に『恐竜バーガー』寄稿。

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ショートショートの可能性と豊かさが詰まったアンソロジーですのでぜひ!
 

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