黒いトンガリ帽子

ふと夜空を見上げると、黒いトンガリ帽子がフワフワと浮いていた。
やがて、トンガリ帽子はストンと落ちた。
落ちた先には大きなカボチャがあった。
トンガリ帽子を被ったカボチャに、三角の穴が二つとギザギザの亀裂が一つ入った。それはまるで目と口のようだった。
そんなカボチャが突然フワッと浮いた。そして、その一部始終を見ていた僕に向かって飛んできた。

「ひっ！」

アッという間に僕の目と鼻の先までカボチャが詰め寄ってきていた。

「trick or treat!」

発音が良すぎて、最初何を言われたのかわからなかった。

「トリック・オア・トリート！」

あぁ、今夜はハロウィンか。
僕は急いでたまたま持っていたガムを差し出した。
するとトンガリ帽子がコウモリに化け、僕の手からガムをくわえ奪い、バサッバサッと夜空に飛んでいった。
呆然と立ちすくんだ僕の足元には、カボチャがゴロリと一つ転がって、いた。