火球的

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「そんなに速く飛ぶ?」
「飛ぶよ。ヨーツーべ見てみ」
私が火球の話をしても友人は訝しげだ。猛スピードの大火球が海外の大地を直撃する映像を凝視していた彼女は、あぁ、と顔を上げた。
「あたしが思ってたの人魂だ」
「え……まああれも燃えてそうだし『たま』系だけど。で、なんで急に『火球』を調べてるの?」
「今日、課長にかきゅう的速やかに書類を作れって言われてさ」
友人は座ったままくるくる椅子を回した。
「かきゅうってわかんなくてスマホで文字変換したら、火急と下級だけで。けどほかにもあった気がして」
私は「予測変換」の結果を彼女に見せた。
「たくさん出すぎ。どれ?」
「これだよ」

そのとき、オレンジと白の大きく眩しい火の塊が、窓の外の空を斜めに横切った。
「速やかに待避してください」
社内に緊急放送が流れる。
私も友人と共に走り出した。
「及ぶ可くもない」という言葉を必死に頭から振り払いながら。
その他
公開:18/10/28 16:02
更新:18/10/28 16:05

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海:優秀作)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト:入選)
「最高の福利厚生」(働きたい会社 ショートショートコンテスト:入選)
選出いただきました。

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