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夏休み、私は久しぶりにばあちゃん家を訪れた。山奥の古い家だ。
『よう来たね』
「暑ちぃね」
ばあちゃん家の土間には水瓶があって、懐かしさに私はその水を飲んだ。隣にはもうひとつ瓶がある。
「そういや、この瓶って何?」
『見てみな』
蓋をとり、覗くと硬貨や紙幣がたくさん入っている。
「貯金瓶?」
『それは時瓶といってね。その時代や場所に流れていた時間が、お金や貝殻や木の実に形をかえて落ちとってね。世界中を旅して、拾った時間を貯めてんのさ』
「どうするん?」
『このお金は換時すると、その時間を旅できてね。アンタにも時間通帳あげるね。貯時は楽しいから』
そう言い残し、ばあちゃんは消えた。時瓶も空っぽ。
新しい通帳には、ばあちゃんがこの時代に残した時間が振り込まれていた。

帰り道、ばあちゃんくらいの歳の人とすれ違った。
私に似ていたような気もしたけど、時間を探していて、顔を思い出す時間はなかった。
ファンタジー
公開:18/10/28 12:27
更新:18/10/28 12:50

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

★第19回坊っちゃん文学賞大賞『ジャイアントキリン群』

★2025年12月、2冊同時刊行の電子書籍
『3分間のまどろみ カプセルストーリー』(Gakken)に『恐竜バーガー』寄稿。

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の選択』、六文字の返信ほか)
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ショートショートの可能性と豊かさが詰まったアンソロジーですのでぜひ!
 

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