畳の下(美薗の家)

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 萎びた瞼をつまみ上げて、眼球を覆った。その刹那、首筋に刃物を当てられたかのような違和感を覚えた。そこには、三日の間、互いを貪りあった美園の歓喜が、白い炎のように在った。
 私は小さく唸り、何とかして、その蠱惑から逃れようとした。首筋が音を立てて千切れる感覚。私は一瞬、気が遠くなった。
 彼女の奥に放った私の模倣子は、そこで確実に育まれていく。彼女は、いつか、それと対峙することになる。
「美薗は、私を憎んでくれるだろうか?」
 地面が凍っていく音が聞こえる。張りつめた精神が、それを知らせる。静寂の中、私の瞼が開く。
「私は美薗に見苦しい屍を曝すだろう」
 彼女は下りの電車に乗る。私の拍動が弱まっていくのと同じ速度で、彼女はここに近づいてくる。
 彼女が私の亡骸を軽がると転がして、畳を持ち上げる情景が目に浮かぶようだ。
 この家は、美薗にとって、我が家のように感じられる事だろう。
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公開:18/10/28 07:21
更新:18/10/28 16:21

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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