落葉とすみれに卒業宣言~フラワーネットワーク⑦
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「珍しいわね、もみじさん」
玄関を掃いていた箒が止まる。
「久しぶり、お義母さん。親父生きてる?」
「創樹(もとき)さんなら、新作が上がって、部屋で寝てるわ」
髪に白いものが目立っても、笑顔と声は昔のまま。
幼馴染の蘭も雰囲気が似てる。……『彼女』は真逆だけど。
「今度はどんな話?」
ますます珍しいという顔。大学進学せず家を出て、花屋で働き始めた俺は、この家に帰る事も、作家の親父に触れる事も滅多になかった。
露骨に避けているのを、義母はずっと気付いていただろう。
「飲み物と恋がテーマの、18篇連作ですって」
「……お義母さん。ヴェルレーヌの『落葉』今も好き?」
「ええ。貴方達との大切な思い出だもの」
親子二代なんて、まるで源氏物語だ。笑えるくらいだし、最初の失恋はとっくに時効か。
「22年前。俺も青かったな。……ね、すみれ先生」
軽く呟いて戸を引く。今日は大事な報告に来た。
「ただいま!」
玄関を掃いていた箒が止まる。
「久しぶり、お義母さん。親父生きてる?」
「創樹(もとき)さんなら、新作が上がって、部屋で寝てるわ」
髪に白いものが目立っても、笑顔と声は昔のまま。
幼馴染の蘭も雰囲気が似てる。……『彼女』は真逆だけど。
「今度はどんな話?」
ますます珍しいという顔。大学進学せず家を出て、花屋で働き始めた俺は、この家に帰る事も、作家の親父に触れる事も滅多になかった。
露骨に避けているのを、義母はずっと気付いていただろう。
「飲み物と恋がテーマの、18篇連作ですって」
「……お義母さん。ヴェルレーヌの『落葉』今も好き?」
「ええ。貴方達との大切な思い出だもの」
親子二代なんて、まるで源氏物語だ。笑えるくらいだし、最初の失恋はとっくに時効か。
「22年前。俺も青かったな。……ね、すみれ先生」
軽く呟いて戸を引く。今日は大事な報告に来た。
「ただいま!」
青春
公開:18/10/29 11:30
更新:19/03/03 18:44
更新:19/03/03 18:44
フラワーネットワーク
最終回まで残り1
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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